『夜のカフェテラス』には、単なる風景描写を超えた「宗教的モチーフ」が潜んでいるという説が、美術研究者の間で長年熱心に議論されています。2013年、美術史家ジャレド・バクスター氏が発表した論文をきっかけに、世界的な注目を集めました。
その核心となるのが、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画『最後の晩餐』との類似性です。画面中央を拡大して観察すると、以下の興味深い特徴が浮かび上がります。
・中央に佇む白い服の給仕:長い髪と白い衣装を身にまとい、イエス・キリストを連想させる佇まい。
・周囲を取り囲む12人の人物:テラス席には、給仕の周りに正確に12人の客が配置されている。
・立ち去る黒い人影:左側の暗がりへ向かって歩き去る人物が、キリストを裏切ったユダの構図と重なる。
・背後の窓枠:給仕の真後ろにある窓の木枠が、明確な「十字架」の形を成している。
牧師の息子として育ち、自身もかつて伝道師を目指したほど信仰心の厚かったゴッホ。家族への手紙でも「宗教への強い欲求」を吐露していた時期と重なることから、この『最後の晩餐』オマージュ説は単なる都市伝説にとどまらず、画家の内面世界を読み解く重要な鍵として受け止められています。