ネット上の情報やSNSの言説には、本作に関して事実と異なる俗説が散見されます。鑑賞の解像度を上げるために、代表的な2つの誤解を正しておきましょう。
誤解1:「星月夜」と「ローヌ川の星月夜」は同じ絵の別バージョン?
ネットの画像検索で「星月夜」と入力すると両方の画像が混在して表示されるため、「同じ絵の手直し」と誤認しているケースが目立ちます。前述の通り、これらは制作場所も時期も、画家の精神状態も異なる完全に独立した別作品です。画風の平穏さと実景の美しさを味わうなら本作(オルセー版)、激動の精神的クライマックスに触れるならサン=レミ版(MoMA所蔵)と、明確に区別して鑑賞するのが正しいアプローチです。
誤解2:過去に日本で頻繁に展示されており、すぐに見られる?
『ローヌ川の星月夜』の来日展覧会について、過去の「オルセー美術館展」などで展示された記録はあるものの、その頻度は極めて限定的です。フランスの国宝級絵画であるため海外持ち出しの審査は年々厳格化しており、2026年現在の展示場所はパリのオルセー美術館(地上階展示室)に固定されています。日本国内の巡回展で本物と出会える機会は極めて稀であり、「いつでも国内で見られる」という認識は明らかな誤りです。