工房名である「山笑堂」の「山笑う」という言葉は、俳句における春の季語に由来する。中国・宋代の画家である郭熙(かくき)が残した画論『林泉高致』の「春山澹冶にして笑うがごとし」という一節から採られた表現だ。冬の厳しい寒さと沈黙を乗り越え、草木が芽吹き、山全体が生命感に満ち溢れる春の光景を例えたものである。
この名は単なる美しい言葉の選択にとどまらない。ヒビが入り、あるいは破片と化した器が、職人の手仕事を経て再び鮮やかな息吹を取り戻すプロセスそのものを象徴している。欠損は「隠すべき欠陥」ではなく、「新たな魅力の始まり」へ変貌を遂げる。山笑堂の仕事場には、自然の循環と人間の意志が交差する独特の静けさが満ちている。