一連の騒動は、四百年続く興行をビジネスとして支えてきた松竹株式会社の経営基盤をも揺るがした。同社にとって、銀座の象徴である歌舞伎座を連日満席にすることは至上命令である。しかし、スター役者の個人的な人気とカリスマ性に過度に依存する古典的なビジネスモデルは、ひとたび主役にトラブルが生じれば一気に破綻を来すリスクを抱えていた。
代役の急派や演目の差し替えといった場当たり的な対応で当場の危機を凌いだものの、本質的な構造改革は先送りされたままだ。伝統を守るための保守的な経営方針と、コンプライアンス遵守を求める現代社会の厳格な要請。興行会社としてその板挟みとなった松竹は、今まさに興行態勢の抜本的な見直しを迫られている。