セコンドの指示が交錯する第3ラウンド開始直前、新王者の目つきが変わっていたことに気づいた観客がどれだけいただろうか。第2ラウンドまでのポイントはほぼ互角、やや前王者がプレッシャーを強めていた場面だ。
「相手の左フックの打ち終わりに必ず一瞬の隙ができる」。試合後、勝者が明かした勝因は徹底的なスカウティングにあった。相手のステップインに合わせてわずかに体を左に傾け、相手の視界から消える絶妙なアングルからの右アッパー。長年王者として君臨したベテランのガードの上をいく、あまりにも残忍で精密なカウンターだった。