そして1968年、日本のテレビ史に刻まれる金字塔『肝っ玉母さん』がスタートする。脚本を担当したのは、人間描写の第一人者である作家の平岩弓枝。平岩は彼女のキャラクターを最大限に活かし、時に厳しく、時に優しく家族を包み込む「大月鈴」という最高のマザー像を作り上げた。
『肝っ玉母さん』の誕生裏話として知られるのは、撮影現場での徹底したリアルへのこだわりだ。平岩弓枝が紡ぐテンポの良いセリフ回しと、京塚昌子が見せる生活感あふれる仕草。蕎麦屋を切り盛りしながら子供たちを育てる鈴の姿は、単なるフィクションを超え、高度経済成長期を生きる庶民の等身大の憧れとなった。現場での秘話として、彼女は共演する若手俳優たちに対しても実の親のように温かく接し、控室にはいつも自家製の差し入れが並んでいたという。演技を超えた本物の「母性」が、画面を通して全国のお茶の間に届いていたのだ。