映画『ワイルド・スピード』のようなド派手なカーアクションを思い出してほしい。あるいはNetflixで世界的な流行を見せるディザスター・アクション作品のワンシーン。浸水した車内で主人公が力任せにフロントガラスを蹴破り、間一髪で生還するドラマチックな演出はお馴染みだ。観客の胸をすかせる最高のエクスタシーだが、防災の視点から言えば恐ろしい「有害な幻想」に過ぎない。
現実の自動車構造は、映画のセットとは根本的に異なる。ドライバーが足でどれほど強く蹴ろうが、スマートフォンや車内の小物で殴りつけようが、現代のクルマの前面ガラスはビクともしない。ハリウッド的な演出を鵜呑みにして車内で暴れること自体が、残り少ない酸素と体力を無駄に消耗させる最大の罠なのだ。