ふくらはぎの筋肉は、足の静脈を取り囲むように収縮と弛緩を繰り返し、血液を心臓へと押し戻す「筋ポンプ作用」を担っています。運動不足や長時間の同一姿勢によってこの筋肉が硬直すると、血液循環とリンパの流れが停滞し、老廃物が蓄積して重だるさを引き起こします。しかし、休息をとっても一向に改善しない場合、単なる筋肉の張りではなく、血管や神経の器質的疾患を疑わなければなりません。
取材した循環器内科および血管外科の専門医によると、臨床現場で最も高頻度に確認される疾患が下肢静脈瘤です。静脈の中にある逆流防止弁が壊れ、血液が足にうっ滞することで、夕方から夜間にかけて足が重だるくなり、こむら返り(足のつり)が頻発します。さらに、足の動脈硬化が進んで血管が細くなる閉塞性動脈硬化症では、組織へ十分な酸素が届かず、歩行時にふくらはぎが締め付けられるように痛む間欠性跛行(かんけつせいはこう)が生じます。
加えて、腰の神経が圧迫される腰部脊柱管狭窄症では、下肢への神経伝達が阻害され、ふくらはぎのしびれや脱力感を伴いだるさが現れます。また、血糖値が高い状態が続くことで末梢神経や微小血管が傷つく糖尿病性神経障害も、足の先端からふくらはぎにかけての慢性的なだるさや違和感の大きな要因です。「ふくらはぎの張り」という日常的な症状の裏には、これほど多岐にわたる病因が絡み合っています。