カルチャーシーンに目を向けると、恋愛における「手繋ぎ」の持つ意味合いの変化が見えてくる。大ヒットを記録した映画『花束みたいな恋をした』では、主人公たちが交際前に居酒屋で終電を逃し、ぎこちなく歩くシチュエーションが印象的だった。あの劇中に漂っていたのは、手をつなぎたいけれど繋げない、言葉にならない曖昧な距離感の美学だ。
映画が象徴していたように、昭和や平成の恋愛ドラマで定番だった「強引なエスコート」は、令和の現代においては「相手の意思を無視するマナー違反」と受け取られかねない。手を繋ぐというシンプルな動作ひとつに、時代の価値観が色濃く反映されている。相手のペースを尊重できるか否かが、現代における「チャラさ」を見極める踏み絵となっているのだ。