近年、希少名字を取り巻く環境を大きく変えたのがポップカルチャーの力だ。その起爆剤となった筆頭格が、大ヒット漫画・アニメ作品の『鬼滅の刃』である。主人公の「竈門(かまど)」をはじめ、「産屋敷(うぶやしき)」「甘露寺(かんろじ)」「栗花落(つゆり)」といった、現実には全国に数世帯しか存在しないような歴史的・宗教的な響きを持つ珍名が劇中に次々と登場した。
これらの作品が出版・メディア産業の枠を超え、動画配信サービスのNetflix等を通じてグローバルに配信された結果、かつては難読とされるだけだった珍名が、世界中のファンの間で「クールで美しい名前」として認識される大転換が起きた。かつては学校のテストや書類手続きで苦労した子どもたちが、今やアニメの主人公と同じようなカッコいい名前として誇りを持つようになるなど、メディアの影響力は名字に対する社会的価値観そのものを塗り替えつつある。