日常の買い物はAmazonで完結し、映像コンテンツはNetflixで無限にストリーミング視聴できる時代となった。だが、デジタル情報が溢れかえる反動として、物理的な実体を持つアート作品に対する価値観が再定義されている。かつて篠山紀信が被写体の奥底にある生命力を射抜いたドキュメンタリー写真の系譜や、蜷川実花が構築した濃密で力強い色彩美の世界観など、日本の写真芸術は常に独自の美意識を刷新してきた。
画面上のピクセルデータとして流れていく画像に対し、手元に所有するアート写真集は、もはや単なる本ではなく「私的なギャラリー」としての意味合いを帯びる。富士出版が投じた一石は、使い捨てにされるビジュアルコンテンツへの批評であると同時に、真の写真表現が持つ不滅の価値を証明している。