片岡千之助を語る上で欠かせないのが、上方歌舞伎の大名跡「松嶋屋」を支える血脈です。千之助の祖父は人間国宝である十五代目片岡仁左衛門、そして父親は名女方として名高い片岡孝太郎という、歌舞伎界屈指のサラブレッドとして生を受けました。
千之助の名が広く世に知れ渡る契機となったのは、2011年、当時わずか11歳で祖父・仁左衛門と挑んだ『連獅子』の舞台です。厳しい稽古の末に成し遂げた祖父と孫の競演は、歌舞伎史に残る伝説の一幕として今も語り継がれています。当時の特番インタビューにおいて、祖父・仁左衛門は「甘やかしは一切しない。しかし、彼の舞台への情熱は本物だ」と語り、厳しい師弟関係の裏にある深い愛情を覗かせました。
また、母・博子さんとの関係や実家のルーツについても関心を集めています。孝太郎と博子さんは2013年に離婚を経験していますが、千之助は両親双方への感謝と敬意を公言。家庭環境の変化を乗り越え、家族それぞれとの間に健全な信頼関係を築き上げてきた精神的な成熟度が、舞台での深みある演技を支える基盤となっています。