南大隅町にひっそりと佇む「雄川の滝」は、一度目にすれば言葉を失う美しさだ。滝壺を満たすエメラルドグリーンの水面は、日光の差し込む角度によって刻一刻と表情を変える。かつてNHK大河ドラマ『西郷どん』のオープニング映像に起用されたことで一躍脚光を浴びたが、現地を訪れるとテレビ画面越しでは伝わらない圧倒的な静寂と冷涼な空気に包まれる。単なる歴史ドラマのロケ地巡りという枠を超え、この幻想的な水鏡には誰もが息を飲むはずだ。
この地に魅了されたのは、現代の旅行者だけではない。幕末の英傑・西郷隆盛もまた、この地域の深い山々と温泉を深く愛した一人だった。激動の時代、政治の喧騒から離れて大隅の湯治場に身を寄せ、ウナギを食し、愛犬とともに山野を駆け巡ったと伝えられている。偉人が傷を癒やし、思索を深めたゆかりの温泉地は、今も変わらぬ源泉をコンコンと湧き出させ、訪れる者に時空を超えた癒やしを与えている。