長江俊和氏は、日本におけるモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)の第一人者として知られています。日本大学芸術学部映画学科を卒業後、テレビ番組の制作現場に飛び込み、『奇跡体験!アンビリバボー』や『とんねるずのみなさんのおかげです』など、バラエティからドキュメントまで幅広いジャンルでディレクターとしての腕を磨きました。
テレビ演出のリアリティを熟知していた長江氏が2003年に生み出したのが、フジテレビの深夜枠でゲリラ的に放送された『放送禁止』です。「お蔵入りになった取材テープをそのまま流す」という体裁を取りながら、実際には緻密に計算された脚本とキャスティングによる完全なフィクション。しかし、過剰な演出やBGMを極限まで削ぎ落とし、本物のドキュメンタリー映像特有の生々しさを再現したことで、多くの視聴者が「本物の放送事故や未解決事件ではないか」と錯覚するほどの社会的インパクトを与えました。
虚構と現実の境界を曖昧にする長江氏の手腕は、単なるホラーやミステリーにとどまらず、メディアの持つ危うさや人間の業を浮き彫りにするジャーナリスティックな視点に支えられています。