街中を走るすべての自家用乗用車と軽自動車には、1年ごとの定期点検が義務付けられています。根拠となる法律は道路運送車両法 第48条(定期点検整備)です。同条文には「車両の使用者(オーナー)は、点検を行い、必要な整備をしなければならない」と明記されています。
ネット上やドライバーの間で長年論争となっているのが、「義務であるにもかかわらず、受けなくても取り締まられないのはなぜか」という疑問です。取材を進めると、日本の法体系が敷く「自己管理責任の原則」に行き着きます。
車検(継続検査)を受けずに公道を走ると、道路運送車両法違反(無車検運行)および自動車損害賠償保障法違反(無保険運行)となり、即座に違反点数や免許停止、刑事罰の対象になります。一方、法定12ヶ月点検は「自動車を安全な状態に維持するのは使用者自身の責任」という思想に基づいており、罰則規定が意図的に設けられていません。
では、なぜ車検があるのに1年ごとの点検が存在するのか。その決定的な違いは「検査」と「予防整備」の思想差にあります。車検は、検査ラインを通したその瞬間に保安基準に適合しているかをチェックする「公道走行の最低条件確認」に過ぎません。極端に言えば、翌日にブレーキパッドが摩耗し切って故障したとしても、車検自体は合格してしまいます。
これに対し、法定12ヶ月点検は部品の摩耗状況やオイル類の劣化を精密に診断し、向こう1年間をトラブルフリーで走行できるようにコンディションを整える予防保全です。走行中の突然の故障事故を防ぎ、クルマ社会全体の安全網を支える目的から、この2本柱の仕組みが維持されています。