厚生労働省の追跡調査や就労支援現場の臨床データによると、発達障害のある方の就職後1年時点での職場定着率は約6割にとどまり、一般就労枠(クローズ就労)ではさらに低下する傾向が見られます。なぜ、どれほど強い就労意欲を持っていても退職へと追い込まれてしまうのか。そこには障害特性ごとに異なる明確な心理的背景と行動パターンの罠が存在します。
ADHDが仕事ですぐ辞める原因と心理的背景
注意欠如・多動症(ADHD)の方が早期退職に至る主因は、脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)の機能特性に起因する「刺激への渇望」と「ワーキングメモリの制約」です。業務に慣れて刺激が薄れると強烈な退屈感や焦燥感が生じ、注意散漫から書類の誤記やスケジュールの失念といった初歩的ミスを頻発させます。
さらに、周囲からの叱責が積み重なると「自分はここにいてはいけない」という強い拒絶過敏(RSD:拒絶敏感不快症)が発動し、衝動的に退職届を出してしまうケースが後を絶ちません。計画的な転職ではなく、「この苦痛の空間から今すぐ逃げ出したい」という突発的な防衛反応が、職歴の短期化を招く大きな要因となっています。
ASDが職場で孤立してしまう真相と「暗黙の了解」の壁
一方、自閉スペクトラム症(ASD)の方が離職に追い込まれる背景には、言語外コミュニケーションの齟齬があります。日本の職場には「適当にやっておいて」「空気を読んで察して動く」といったハイコンテクストな文化が色濃く残っています。ASDの特性を持つ人は言葉を字義通りに受け取る傾向が強いため、指示の曖昧さに極度の不安を覚えます。
また、雑談や偶発的なやり取りにおける共感表現が苦手なことから、「何を考えているかわからない」「協調性がない」と誤認され、徐々にチーム内で孤立を深めていきます。本人は誠実に職務を果たそうとしているにもかかわらず、周囲との摩擦がストレスとなり、感覚過敏の悪化や適応障害を併発して出勤困難に陥るのが典型的なパターンです。