兼近大樹の歩んできた経歴は、日本の芸能界において極めて異例です。北海道札幌市での極貧の幼少期、定時制高校の中退、若気の至りや過酷な環境から生じた過去の挫折。2019年に過去の逮捕歴が週刊誌報道によって公となった際、彼は逃げ隠れすることなく事実を認め、自らの言葉で過去の過ちと向き合い続ける覚悟を表明しました。
その壮絶な半生を昇華させたのが、2026年に文藝春秋から刊行された自伝的小説『むき出し』です。主人公・石山が直面する貧困、暴力、無理解、そして芸人としての光と影を描いた同作は、単なるタレント本を超えた文学作品として高い評価を獲得しました。
「自らの恥部や痛みを隠さず、すべてをさらけ出すことでしか前に進めない」という彼の表現動機は、今なお多くの読者の胸を打ち続けています。過去を美化せず、かといって過度に自己憐憫に陥ることもなく、冷徹な筆致で自己を解剖したこの作品こそ、兼近大樹という表現者のバックボーンを理解する上での原典となっています。