テムノドントサウルスは、中生代ジュラ紀前期(約2億年前〜1億7500万年前)の海に生息していた魚竜(ぎょりゅう)の代表格です。魚竜とは、陸生爬虫類が海へ進出して魚類やクジラのような流線型の進化を遂げたグループであり、恐竜とは生物学的に異なる系統の海生爬虫類に分類されます。
当時の海において、テムノドントサウルスはまさに無敵の存在でした。学名の「Temnodontosaurus」は「切り裂く歯を持つトカゲ」を意味し、その名の通り頑丈な顎には獲物の肉を骨ごと噛み砕く鋭い円錐形の歯がびっしりと並んでいました。胃内容物の化石調査からは、大型のイカやアンモナイトにとどまらず、首長竜の幼体や小型の魚竜までも捕食していた痕跡が確認されており、当時の海洋生態系における完全な頂点捕食者(アペックス・プレデター)であったことが実証されています。