時計の針を巻き戻してみよう。あの夜、NHK総合で生放送された「第67回NHK紅白歌合戦」では、国民的カルチャーの象徴として一世を風靡していたAKB48グループによる特別企画「AKB48 夢の紅白選抜」が行われていた。全国のファンや視聴者による一般投票によって、本番のステージに立てる48名と、さらにその中の上位16名(選抜メンバー)が生放送中のステージ上でリアルタイムに発表されるという、極めて苛烈な企画である。
兒玉遥は当時、福岡を拠点とするHKT48の中心メンバーとして絶大な人気を誇り、グループの顔として躍進を続けていた。誰もが彼女の上位入賞を信じて疑わなかったが、ランキングが下位から順に読み上げられるにつれ、会場内には異様な緊張感が漂い始める。名前が呼ばれるたびに一喜一憂する女性アイドルたちの表情が、容赦なくアップで全国に中継されていた。