名匠・是枝裕和が紡ぎ出す作品世界に見られるような、人の心のあわいをすくい取るヒューマンドラマにおいて、彼女の資質は際立つ。多くを語らずとも、指先のわずかな震えや視線の揺らぎ一つで、登場人物が背負ってきた年月の重みを物語ってしまう。説明過多になりがちな現代の映像作品において、この「語りすぎない勇気」を持てる俳優は極めて貴重だ。
関係者の間では、彼女の芝居を「引き算の美学」と評する声が多い。感情を爆発させて観客を圧倒するのではなく、内側に押し込めた感情の圧力をじわじわとスクリーン越しに伝播させる。劇的な出来事が起きない日常の風景の中に、人間存在の滑稽さや哀愁を自然と滲ませるそのメカニズムは、国内外の映画賞審査員やクリエイターたちを唸らせ続けている。