取材によって浮き彫りになったのは、改革の旗手を務めた当時の緊迫した舞台裏である。外部からの圧力や既得権益との衝突の最中、彼が最も守ろうとしていたのは「力士が相撲だけに命を懸けられる透明な土俵」であった。当時、密室で行われていた数々の交渉や妥協の打診を、彼はすべて拒絶したという。「曲げて生きるくらいなら、すべてを失ったほうがいい」――近しい関係者が明かしたその言葉は、彼が貫いた孤独な戦いの本質を雄弁に物語っている。
さらに、多くの人々が関心を寄せ続ける家族との関係にも、静かな雪解けと新たな距離感が生まれている。若乃花勝との確執、母との別離など、数々のドラマがメディアを騒がせてきた。しかし、還暦を前にした今、互いに異なる道を歩みながらも、父・利彰の命日や節目において、言葉を交わさずとも通底する「一族の絆」を再確認する瞬間が訪れているという。憎しみではなく、同じ過酷な宿命を背負った者同士にしか分からない共感が、長い年月を経て静かに息づいている。