じんめん犬の最大の魅力であり、同時に最大の悲哀でもあるのがその出自です。妖怪不祥事案件のなかでも群を抜いて現実的で生々しい元サラリーマンという経歴を持っています。
人間時代はごく普通の会社員として懸命に働いていましたが、ある日突然リストラ通告を受け、職を失ってしまいます。絶望に打ちひしがれ、自暴自棄になって夜道で酒をあおっていたところ、工事現場から落下してきた大量の木材の下敷きになる大事故に遭遇。その場に偶然居合わせたトイプードルと魂および肉体が奇跡的(かつ悲劇的)に融合し、妖怪「じんめん犬」として生まれ変わりました。
「女性にキャーキャー言われてモテまくりたい」という人間時代の未練と、トイプードルの愛くるしさを手に入れたはずが、顔面だけはくたびれた中年のまま。この絶妙なミスマッチこそが、彼が背負う業の深さなのです。