へその内部に潜む微生物叢の多様性は、現代科学の予想を遥かに超えている。かつてノースカロライナ州立大学の生物学者ロブ・ダン(Rob Dunn)氏が率いた「Belly Button Biodiversity Project」は、世界中の科学界に大きな衝撃を与えた。数百人の被験者のへそから採取したサンプルを解析したところ、数千種にも及ぶ細菌が同定され、その中には科学的に未記載の種や極限環境にしか存在しないと考えられていた珍しい微生物が含まれていた。
医学論文データベースPubMedに蓄積された皮膚マイクロバイオーム関連の研究でも、へそは人体の中で最も生物多様性に富んだ特異な領域の一つとして位置づけられている。これらの細菌群の多くは普段、外来の病原菌から皮膚を守るバリア機能を果たしている。乱暴に除去を試みて皮膚常在菌のバランスを破壊すると、日和見感染の引き金を引くことになりかねない。