「ゴールを決めること」と「帽子(ハット)」には一見何の関係もないように思えます。しかし、その起源を紐解くと、ハットトリックの由来はクリケットという英国発祥の伝統球技にあります。
舞台は1858年のイングランド。当時屈指のクリケット選手であったヒースフィールド・ハーマン・スティーブンソン(H.H. Stephenson)が、相手チームの打者3人を「3球連続でアウト(ウィケット奪取)」にするという、当時としては天文学的な神業を達成しました。クリケットにおいて3連続アウトを取ることは至難の業であり、スタジアムにいた観客やクラブ幹部は熱狂の渦に包まれました。
この前人未到の快挙を称えるため、ファンや関係者がカンパ(募金)を募り、スティーブンソン選手に記念として「特製の高級帽子(ハット)」をプレゼントしたことが、この言葉の直接の誕生の瞬間です。奇術師が空の帽子から次々とハトやウサギを取り出す手品(トリック)のような離れ業という意味合いも重なり、やがて「ハットトリック」という言葉として定着しました。
その後、19世紀末から20世紀初頭にかけてサッカーをはじめとする他の英国発祥スポーツへと波及し、「同一試合で3回の大手柄を立てる」ことをハットトリックと呼ぶ文化が世界中に広がっていきました。