佐々木酒造を語る上で欠かせないのが、劇的な事業承継のドラマです。同社の現在の舵取りを担うのは、三男である代表取締役の佐々木晃(ささき あきら)氏。公式パンフレットや各種メディアインタビューでも語られている通り、当初晃氏が蔵を継ぐ予定はありませんでした。
長男は建築の道へ進み、次男である佐々木蔵之介(本名・佐々木秀明)氏が酒造りを学ぶため神戸大学農学部でバイオ工学を専攻。実質的な後継者と目されていましたが、大学在学中に演劇の魅力に取り憑かれ、広告代理店勤務を経て本格的に俳優の道へ転身しました。この想定外の事態を受け、仏教大学文学部を卒業して他業種への就職を考えていた三男の晃氏が急遽呼び戻され、1995年に入社、のちに社長へと就任したという経緯があります。
「兄貴たちが自分の夢を追って家を出たため、残された自分が継ぐしかなかった」と当時を笑いまじりに述懐する晃社長ですが、その後の手腕は目覚ましいものがありました。日本酒離れが進む過酷な市況の中、全量を特定名称酒へシフトする品質改革を断行。伝統の銘柄「聚楽第(じゅらくだい)」を全国新酒鑑評会の金賞常連へと押し上げました。
そして現在、同社を語る上で外せない名物が「猫社員」の存在です。蔵の敷地内に迷い込んできた保護猫たち(ちび子、あーちゃん等)を社員として迎え入れ、「パトロール担当」「癒やし課」などとして公式SNSで発信を開始。酒造りの張り詰めた空気感と、猫たちの気ままな日常とのギャップがSNS上で爆発的な反響を呼び、2026年現在も公式X(旧Twitter)やInstagramで数十万規模のエンゲージメントを誇る強力な広報資産となっています。