放送当時、最高視聴率62.9%という前代未聞の記録を打ち立てた『おしん』。過酷な運命に耐え抜き、たくましく生き抜く少女の姿は、高度経済成長を経て豊かになった日本人に「本当の幸せとは何か」を強烈に問いかけた。
単なるノスタルジーにとどまらない。その影響力は日本国内を飛び越え、世界90以上の国と地域で放映された。内戦下のレバノンで放映された際には街から人が消えたという逸話や、イランで視聴率80%を超えた社会現象は、テレビ史に刻まれる伝説だ。
半世紀近くが経過した現在でも、海外のファンや若い世代から声がかかるという。「国や文化、時代が違っても、一生懸命に生きる人の姿は人の心に直接届く」。そう振り返るまなざしには、若くして人間の根源的な感情を表現し切った表現者ならではの矜持と感謝が漂う。