現場となった駅や車内において、公共交通機関としての対応は極めて困難を極めた。JR東日本をはじめとする鉄道事業者は、他の乗客からの苦情や異臭騒ぎに対し、現場の駅員や警備員が警戒態勢を強めざるを得なかった。しかし、乗車券を購入して乗車している以上、明確な規約違反がない限り強制排除はできない。
一方で、厚生労働省や地域の福祉事務所も手出しがしづらい構造が存在した。本人の拒絶や身元不詳、さらには精神疾患や自己ネグレクトが絡むケースにおいて、日本の現行法制度では強制介入のハードルが極めて高い。交通インフラと行政福祉の狭間で、男は長い間グレーゾーンを歩み続けていた。