都市国家が単なる「小さな国」ではなく、独立した政治単位として成立・存続するためには、いくつかの厳しい条件を満たす必要がある。歴史的事例と現代の実例を分析すると、次の3条件が浮かび上がる。
第一に経済的自立である。都市国家は食料やエネルギーをほぼ全面的に輸入に依存するため、輸入代金を支払えるだけの外貨獲得能力が絶対条件となる。シンガポールは金融と物流、モナコは観光と金融、ヴェネツィア共和国は東西貿易の独占でこれを実現した。逆に、経済的自立を失った都市国家は歴史から消えている。
第二に地政学的要衝であること。都市国家は軍事力で大国に対抗できないため、その存在自体が周辺大国にとって有益である必要がある。シンガポールはマラッカ海峡の要衝として、モナコはフランス南東部の緩衝地帯として、それぞれの地政学的価値が独立維持の担保となっている。
第三に強力な外交力と国際的プレゼンスである。小国は同盟関係と国際法の枠組みに依存せざるを得ない。シンガポールはASEANの中核として、バチカンは世界12億人以上のカトリック信者の頂点として、その規模に見合わない国際的影響力を行使している。外交力なき小国は、歴史的に見て独立を維持できていない。