この場所の魅力は、卓越した名湯だけに留まらない。敷地内に足を踏み入れた瞬間から視界を奪う広大な日本庭園は、昭和の名建築家や庭師の手仕事が色濃く残る歴史的遺産だ。元々は実業家の邸宅として昭和21年に建てられた木造建築を、現代の古民家再生・建築保存プロジェクトによって丹念に改修・再生した経緯を持つ。
東京都板橋区という利便性の高いロケーションにありながら、登録有形文化財クラスの重厚な梁や磨き込まれた廊下、そして四季折々の草花が息づく枯山水庭園が見事に共生している。苔むした岩肌を伝う露、秋に燃え立つ紅葉、冬の澄んだ空気に映える雪景色。湯上がりに縁側へ腰掛け、風に揺れる木々の音に耳を澄ませる時間は、何物にも代えがたい贅沢そのものだ。