本作の舞台は、近い未来の東京。脳に極小のチップを埋め込み、認知機能を飛躍的に向上させる「ブレイン・リンク」技術が実用化された世界だ。この最先端医療の闇に切り込むプロットは、かつて『変身』や『分身』で医療倫理を問いかけた東野氏ならではのアプローチと言える。単なるサイエンス・フィクションではなく、地続きの現実として描かれるディテールが、読者に生々しい恐怖を与える。
事件は、この技術の第一人者である脳科学者・御子柴が、自身の研究室から忽然と姿を消したことで動き出す。残されたのは、奇妙に書き換えられた研究データと、謎のメッセージだけだった。