東日本大震災における犠牲者の身元確認において、決定的な役割を果たしたのが法医学者による遺体検案と歯科医師による歯型照合です。津波による外傷や損壊、時間の経過による状態の変化により、外見や着衣だけで身元を特定することは極めて困難でした。
全国から招集された法医学チームは、遺体の特徴、身体の傷、手術痕などを綿密に記録しました。特に迅速な特定に貢献したのが、歯科所見の照合です。津波被害でカルテ自体が流失した歯科医院も多かった中、日本歯科医師会や大学の専門チームは残存する電子データや診療報酬明細書(レセプト)を回収・復元し、遺体の歯列・治療痕と照合する作業を地道に続けました。
状態が極めて厳しい遺体に対しては、DNA型鑑定が身元確認の最後の砦となりました。警察庁は全国の科学捜査研究所(科捜研)や科学警察研究所(科警研)と連携し、採取した骨や組織からDNAを抽出。家族から採取した対照サンプルとの照合作業を昼夜を問わず進めた結果、震災で収容された遺体の身元特定率は最終的に99%を超えるという世界でも前例のない水準に達しました。