この前代未聞の難工事で主力を担ったのが、伝説の鳶頭・桐生政次率いる「桐生組」を中心とした精鋭の鳶職人たちでした。日本全国から選りすぐりの腕利きが集結し、その数はピーク時で数十名にのぼりました。
彼らが見せた神業の一つが、鉄骨の接合に用いられた「リベット打ち」です。地上や中間デッキの炉で真っ赤に熱せられた鉄の鋲(リベット)を、下層の職人が火箸で挟んで上空へ目掛けて放り投げます。数十メートル上の鉄骨に立つ職人が、それを小さなブリキのバケツや柄杓(ひしゃく)で見事にキャッチし、冷めないうちに接合穴へ叩き込んで大型ハンマーでかしめるという連携プレーでした。
一歩間違えれば灼熱の鉄塊が足元を直撃し転落する極限状態の中、職人たちは言葉を交わすことすらなく、阿吽の呼吸でリベットを次々と打ち込んでいきました。タワーに使われた鉄骨は約4,000トン、打ち込まれたリベットは数十万本に及びますが、その1本1本に桐生組をはじめとする職人たちの魂が刻み込まれています。