音楽的側面から『落日』を解剖するとき、ベーシストでありプロデューサーの亀田誠治が果たした役割の大きさは語り尽くせない。本作は、歌謡曲的な情緒を持ちながらも、本質的には純度の高いオルタナティヴ・ロックとして機能している。亀田誠治が奏でる太く包み込むようなベースラインは、椎名林檎の澄んだピアノとボーカルを底深く支え、楽曲に圧倒的な立体感を与えている。
激しいディストーションギターが吹き荒れる展開においても、低音のボトムが揺らぐことはない。アンサンブル全体がひとつの生き物のように呼吸し、夕暮れから闇へと移り変わるグラデーションを見事に表現している。この卓越したバンドアレンジメントこそ、日本の邦楽ロックシーンにおける金字塔と称される所以である。