春菊天の世界を語る上で避けて通れないのが、半世紀にわたり繰り広げられてきた構造的スタイルの対立だ。葉と茎を細かく刻んで立体的な「かき揚げ」に仕立てる丸揚げ派と、葉の美しさをそのまま活かして薄衣でサクッと揚げる一枚揚げ派。この二大流派の存在が、ファンの偏愛をより一層深めている。
丸揚げ派の真骨頂は、つゆとの一体感にある。密度の高い天ぷらが濃いめのカツオ出汁をぐんぐんと吸い込み、衣の油分がつゆにコクを与え、逆につゆの旨味が春菊の芯まで熱々に染み渡る。一口かじれば、ジュワッと溢れ出る熱狂的な旨味の奔流。これこそが東京のクラシックな立ち食いそばが培ってきた醍醐味だ。
対する一枚揚げ派は、素材そのものの食感と香りのキレで勝負する。衣は極限まで削ぎ落とされ、揚げ時間はほんの数秒。歯を立てた瞬間に響く軽やかな音と、ダイレクトに鼻腔を突き抜ける強いアロマ。油の温度管理と職人の一瞬の眼力がダイレクトに試される、極めて現代的なスタイルと言える。