『ドクターX』の代名詞となった「私、失敗しないので」と「いたしません」。この2大フレーズは、いかにして誕生したのでしょうか。制作陣や脚本家・中園ミホ氏が当時のインタビュー等で明かした証言から、その誕生秘話が浮かび上がります。
脚本を担当した中園ミホ氏は、キャラクター構築の段階で「絶対にブレない、究極のプロフェッショナル像」を模索していました。その契機となったのが、2012年夏に開催されたロンドン五輪です。柔道女子57キロ級で金メダルを獲得した松本薫選手が、試合前のインタビューで見せた圧倒的な眼光と、「ミスはしない」と言い切る鬼気迫る覚悟からインスピレーションを受け、大門未知子の根幹を成すセリフが練り上げられました。
主演の米倉涼子自身も、当初はこのあまりに尊大とも受け取れるセリフに対して「本当にこれを言ってしまって大丈夫なのか」「嫌味な人間に見えないか」と強いプレッシャーと葛藤を抱いていたと告白しています。しかし、監督やプロデューサー陣とのディスカッションを重ね、「患者の命を預かる外科医として、絶対に失敗は許されないという自己への厳格な宣誓である」と解釈を深めたことで、あの揺るぎない説得力を持つ名シーンが完成したのです。
医師免許がなくてもできる業務(院長の回診への同行、愛人の送迎、研究論文の手伝いなど)を「いたしません」の一言で一刀両断するシーンは、理不尽な雑務に追われる現代のビジネスパーソンにとって、最高のカタルシスをもたらす演出となりました。