歴史を振り返れば、計算機という存在そのものが常に人類の脅威や秘密と隣り合わせだった。近代コンピュータの父と称されるアラン・チューリングが戦時下に開発したのは、敵国の暗号を解読するための巨大な計算マシンだった。計算とは本質的に、国家や個人の機密を握るための強力なツールでもあったのだ。
一方で、戦後日本の高度経済成長を支えたカシオ計算機株式会社の創業者・樫尾忠雄らは、世界初の小型純電気式計算機を生み出し、計算を「秘密の暗号」から「人々の日常を便利にするツール」へと解放した。しかし、テクノロジーが高度に発達した現在、計算機は再び「姿を隠した暗号ツール」へと先祖返りしつつあるのかもしれない。