一般的に、電車でのメイクが嫌がられる理由としては「化粧品の臭い」や「ファンデーションやパウダーの粉が服につく懸念」が挙げられる。しかし、今回取材した乗客たちの本音はそれだけにとどまらない。より深層心理に根ざした意外な不快要因が存在していた。
最大の理由は「他人の私的な空間に突然巻き込まれる感覚」だ。本来は洗面所や自室といったプライベートな空間で行われる「素顔から作り顔への変化」という無防備なプロセスを、公共の場で見せられることに対する生理的な違和感である。心理学のエキスパートも「人が他人の無防備な身支度を目にすると、プライバシーの領域を侵害されたような心理的ストレスを感じる」と指摘する。
さらに、実用的な不満も根強い。肘を大きく張ってアイラインを引く動きが隣の乗客に当たる危険性や、手鏡に周囲の乗客が映り込む不気味さなど、空間的な圧迫感に対する不満が噴出している。「公共マナー」の観点から見れば、単なる見た目の問題ではなく、他者のパーソナルスペースへの侵犯が本質的な問題と言える。