いまや西荻窪を語る上で欠かせないのが、全国のカレーマニアを惹きつけてやまないスパイスカレーの存在だ。一般的な欧風カレーやインドカレーの枠組みを軽やかに飛び越え、和出汁、ハーブ、自家焙煎スパイスを緻密に掛け合わせた独創的な一皿が街中で競い合っている。カルダモンやクミンの鮮烈なホールスパイスが弾ける一口目は、まさに味覚の覚醒体験だ。
南インドスタイルのミールスから、スリランカ風の副菜を贅沢に混ぜ合わせて食べるプレートまで、店ごとの哲学は百花繚乱。ライスの上に美しく盛り付けられた色鮮やかなアチャール(漬物)やダル(豆カレー)を少しずつ崩しながら混ぜ合わせる時間は、単なる食事を超えた知的な遊戯に近い。開店前から漂う芳香に引き寄せられ、平日の昼下がりでも遠方からの巡礼者が絶えないのも納得の完成度だ。