インターネット上で頻繁に見かける「猿と一緒にお風呂に入れる秘湯」というフレーズ。この地獄谷温泉 後楽館の混浴の真相を探ると、歴史的な事実と現在の野生動物管理の実態が浮かび上がってきます。
そもそも、世界的に有名になった地獄谷野猿公苑のスノーモンキー(温泉に入るニホンザル)の発祥は、この後楽館にあります。1960年代初頭、後楽館の露天風呂に子猿が迷い込んで湯浴みを覚えたことがきっかけとなり、その後、観光客と猿の衛生的な共生を図るために隣接地に専用の猿用露天風呂を備えた野猿公苑が整備されました。
現在でも、後楽館の混浴露天風呂はサルたちの生息域のただ中に位置しているため、特に厳寒期(12月〜3月頃)の早朝や夕暮れ時、あるいは公苑の給餌時間外などに、好奇心旺盛な個体や群れからはぐれた猿が宿の露天風呂の縁に腰掛けたり、湯船に浸かったりする姿が目撃されることがあります。
ただし、現地を訪れた旅行者が日常的に「猿と肩を並べて混浴できる」わけではありません。後楽館の露天風呂はあくまで人間用の温泉であり、猿にとっては気まぐれな立ち寄り場所に過ぎないためです。また、猿が湯に入ると毛や湯の濁りが発生するため、宿側では定期的な湯の入れ替えや清掃を徹底して衛生環境を維持しています。
野生のニホンザルは愛らしい外見とは裏腹に、鋭い犬歯を持つ野生動物です。露天風呂周辺に猿が現れた場合でも、「目をじっと見つめない」「触ろうと手を伸ばさない」「絶対に食べ物を見せない・与えない」という基本ルールを遵守することが、事故を防ぎ共生を守るための鉄則です。