植物学的にはキク科ダリア属に分類され、遥か熱帯の地であるメキシコ合衆国を象徴する国花としても親しまれるダリア。しかし、19世紀のヨーロッパで花を解読可能な暗号として用いた花言葉(フロリオグラフィー)の文脈において、この花はきわめて複雑な地位を与えられた。
ダリアに与えられた代表的な肯定の意味は「華麗」「優雅」「気品」「威厳」。一重咲きからポンポン咲き、大輪のカクタス咲きに至るまで、他に類を見ない多様なフォームと豊かな色彩が、王室の威風や上流社交界の栄華を想起させたからに他ならない。だが、光が濃ければ影もまた深い。肯定的なメッセージの裏側には、「移り気」「裏切り」「不安定」という不穏な意味がぴたりと張り付いている。一輪の花がなぜ、これほどまでに相反するふたつの感情を背負わされることになったのだろうか。