ビジネスの歴史において、稲盛氏の残したシステムと思想が今なお多くの組織で導入され続けている理由はどこにあるのでしょうか。その核心は、精緻な仕組み(アメーバ経営)と強固な倫理観(フィロソフィ)という「車の両輪」にあります。
アメーバ経営とは、会社組織を「アメーバ」と呼ばれる5〜10人程度の小集団に細分化し、各リーダーに経営を任せる小集団独立採算制です。最大の特徴は、売上から経費を差し引いた付加価値を総労働時間で割る「時間当り採算制度」にあります。これにより、どの現場がどれだけの利益を生み出しているかがリアルタイムでガラス張りに可視化され、社員一人ひとりが「自らの手で会社を経営している」という当事者意識(全員参加型経営)を持つようになります。
しかし、数字や採算の追求だけを推し進めれば、小集団同士のエゴや足の引っ張り合いが起きかねません。そこで不可欠となったのが「京セラフィロソフィ」です。
「人間として何が正しいのか」をすべての判断基準に据え、嘘をつかない、欲張らない、他者を思いやるといったシンプルな道徳律を企業行動の規範としました。JAL再建においても、幹部へのフィロソフィ教育を通じて全社員の心を一つに束ねたことが、奇跡の復活劇を生む決定打となったのです。経営塾「盛和塾」を通じて国内外の1万人を超える経営者にこの哲学が伝承されたことも、支持が広がり続ける大きな要因です。