組織の創始者であり、昭和の裏社会に絶対的な君臨を誇った稲川聖城。その存在感は圧倒的であり、組織である稲川会そのものが彼のカリスマ性によって支えられていたと言っても過言ではない。その血脈を受け継ぎ、三代目として組織の頂点に立ったのが稲川裕紘である。
父である初代が築き上げた絶対的な権力基盤と、時代の変化にともなう組織運営の近代化。その狭間で彼は常に巨大な重圧と戦っていた。旧来の任侠の道徳観を重んじる古参幹部たちと、ビジネスライクな組織改革を進めようとする若手陣営。二つの板挟みになりながらも、彼は独自のリーダーシップで組織の舵を取り続けた。裏社会史において、この時期の権力構造の変化はまさに時代の転換点であった。