インターネット上の言説やまとめ情報では、「学生時代にスカウトされてすぐにパリコレへ行き、そのままトントン拍子で主役級俳優へと駆け上がったシンデレラストーリー」として語られるケースが散見されます。しかし、一次資料や本人が過去に語った回顧録を検証すると、その道程は決して平坦なエリート街道などではありませんでした。
モデル時代の渡仏にしても、大手事務所が手厚くお膳立てしたツアーなどではなく、通訳も同行者もいない中で安宿に泊まり込み、地下鉄マップを片手にオーディション会場へ飛び込む泥臭い挑戦でした。何十社ものメゾンで門前払いを食らい、言葉が通じない苛立ちと極度の孤独感に苛まれながらも、わずかな可能性を掴み取ったのが実態です。
また、俳優への転向時も「モデルの片手間」と呼ばれることを極端に嫌い、過去の栄光であったモデル関係のコネクションやグラビアのオファーを自ら断ち切る覚悟を見せていました。演技レッスンを一からやり直し、オーディションに落ち続ける屈辱を味わいながら、自分の力だけで役を勝ち取る過程を経ています。「過去の成功体験を自ら破壊し、何者でもないゼロの状態から這い上がる」というストイックなメンタリティこそが、大沢たかおという表現者の本質であり、単なるビジュアル先行のスターとは一線を画す所以です。