龍虎の力士人生を語る上で欠かせないのが、奇跡とも称されたカムバック劇です。1970年代初頭、幕内上位で活躍していた最中に右足アキレス腱を断裂。当時は医療技術やリハビリプログラムが現在ほど発達しておらず、大型力士のアキレス腱断裂は事実上の「引退宣告」と同義でした。
公傷制度の適用期間を過ぎ、番付は十両はおろか幕下まで急降下しました。大歓声が響く幕内土俵から一転、観客もまばらな午前中の前相撲や幕下の土俵へ。プライドを打ち砕かれかねない過酷な環境下で、龍虎は腐ることなく黙々と土俵の砂にまみれ続けました。その後、奇跡的に幕内復帰を果たすと、さらに左足のアキレス腱までも断裂するという悲運に見舞われます。しかし、両足の手術と過酷なリハビリを乗り越え、再び三役の地位まで這い上がったのです。
報道各社の当時の取材データや公式記録を照らし合わせても、両足のアキレス腱を断裂しながら幕内上位へ復帰した事例は、長い相撲史の中でも極めて稀有な記録です。この執念の復活劇があったからこそ、ファンは龍虎という力士に単なるビジュアル以上の強靭な精神性を見出し、熱狂的に支持し続けました。