俳優として確固たる地位を築いた現在も、大森南朋のアイデンティティの根底には常に「ロックンロール」が流れています。彼は自らがフロントマン(ボーカル&ギター)を務めるロックバンド「月に吠える。」での精力的な音楽活動を継続しています。
20代前半の大森は、役者として芽が出ず、音楽活動に没頭しながらフリーターとして様々なアルバイトを転々とする日々を送っていました。当時の特番インタビューでも「20代の頃は、何者にもなれない焦燥感ばかりがあった」と述懐しています。深夜のバーや工事現場などで働き、生活費を稼ぎながらギターを掻き鳴らしていた10年近くの不遇な下積み時代が、彼の歌声と佇まいに消えないブルースを刻み込みました。
「月に吠える。」の楽曲は、しゃがれた声で泥臭く生きる男の哀愁や情けなさ、そして一筋の希望を歌い上げるストレートなロックです。俳優が余技として行う音楽活動とは一線を画し、全国のライブハウスを巡り、汗まみれになってアンプの前で叫ぶそのステージングは、音楽ファンやプロのミュージシャンからも高いリスペクトを集めています。芝居で他者の人生を生きる彼にとって、ステージの上は「大森南朋という一人の生身の男」へ帰還するための絶対的な聖域となっています。