父親の影に頼ることなく、下積み時代を経て自らの実力で日本映画界のトップへと駆け上がった大森南朋。彼の名を一躍世界に知らしめたのが、三池崇史監督による衝撃作『殺し屋1』だ。気弱な青年でありながら内に異常な暴力を秘めた主人公・イチを怪演し、映画界に強烈なパンチを見舞った。この作品で見せた狂気と虚無が同居する演技は、父・麿赤兒の血を濃厚に感じさせるものだった。
その後も、北野武監督のバイオレンス金字塔『アウトレイジ 最終章』で見せた圧倒的な凄みなど、アウトローから市井の人間までを硬軟自在に演じ分ける稀代の俳優として確固たる地位を確立。父から直接演技指導を受けたわけではない。しかし、役に自らの肉体と魂をそのまま投げ出す破滅的な覚悟と緻密なリアリティは、間違いなく父・麿赤兒の演技哲学が無意識のうちに継承された結果だ。