歌われる楽曲のバリエーションにも劇的な変化が起きている。かつてのように「誰もが知る定番ヒット曲」を義務感で歌う時代は終わった。現代のナイトシーンを牽引しているのは、SpotifyやYouTube Musicといった音楽配信プラットフォームを通じて形成された、ボーダーレスな音楽嗜好だ。
80年代のジャパニーズ・シティポップから最新のインディーズR&B、海外のチルホップまで、個人のアルゴリズムによって掘り起こされた洗練されたナンバーがバーの空気を満たす。選曲そのものが個人のアイデンティティや美意識を表現するプレゼンテーションとなり、そこから新たな会話が生まれる。「その曲、誰のプレイリストに入っているの?」という問いかけから始まる偶発的なコミュニケーションこそ、現代のバーカルチャーの真骨頂といえる。