ファンの間で「シリーズの最高峰」として常に名前が挙がる3作品は、なぜここまで多くの人々の心を揺さぶり続けるのでしょうか。クレヨンしんちゃん最高傑作のネットの反応を分析すると、単なるノスタルジーにとどまらない、脚本の圧倒的な完成度が浮き彫りになります。
筆頭に挙げられるのが、2001年公開の『嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』です。本作における最大のオトナ帝国の逆襲の感動理由は、敵組織イエスタデイズ・ワンスモアが仕掛ける「古き良き昭和への回帰」という甘美な罠と、泥臭く未来を生きようとする野原一家の対比にあります。特に、父・ひろしが自身の少年時代から就職、みさえとの出会い、しんのすけの誕生を経て現在に至るまでの半生を振り返る「ひろしの回想」は、アニメ史に残る屈指の名場面です。名もなきサラリーマンの平凡な人生の尊さを描き切ったこのシーンに、胸を打たれない大人はいないはずです。
続く2002年公開の『嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』は、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞するなど、戦国大合戦の評価と評判がアニメの枠組みを大きく押し広げた金字塔です。戦国時代へとタイムスリップしたしんのすけが出会う侍・井尻又兵衛と春日城の姫・廉姫の身分違いの恋、そして命のやり取りを描いた合戦のリアリズムは圧巻の一言。ラストに訪れる残酷な運命と、それを受け止める青空の描写は、観る者の心に深い余韻を残します。
そして2014年公開の『ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん』は、中島かずき氏が手掛けた濃密な脚本が光る感動作です。家庭内での威厳を失った父親たちの反乱を描きつつ、本物のひろしとロボットのひろしという二人の父親の葛藤を描き出しました。終盤、家族を守るためにボロボロになりながら腕相撲を交わす場面は、ロボとーちゃんの泣ける名シーンとして今なお語り継がれており、父親の誇りと家族への無償の愛に涙を禁じ得ません。