これらの作品が放つ痛切なまでの感情の正体は、原作者・藤子・F・不二雄の鋭利な人間観察眼に由来する。作者が提唱した「すこし・ふしぎ(SF)」という概念は、奇抜なギミックを楽しむためだけの装置ではない。日常という安全地帯から一歩踏み出した先に待ち受ける、世界の残酷さや他者理解の困難さを浮き彫りにするための舞台装置だった。
『映画ドラえもん のび太と鉄人兵団』において、敵対関係にある存在同士が互いの痛みを理解し合うプロセスは、現代の国際社会の断絶にも通じる重い問いかけを含む。また『映画ドラえもん のび太の結婚前夜』に見られるように、どんなに不器用な人間であっても、他者の痛みに寄り添う優しさこそが最大の美徳であるという確固たる信念が底流に流れている。
子供だましを一切排除したシビアな脚本構成。伏線が回収されるクライマックスにおいて、観客は登場人物たちの決断の重さに圧倒されるのだ。