大平山展望台を語るうえで、一部のオカルトファンやネットユーザーの間で根強く囁かれるのが「心霊スポット疑惑」です。「道中にある古い廃施設付近で視線を感じる」「夜間にドライブしていたらバックミラーに不可解な影が映った」といった投稿が掲示板に散見されます。しかし、これらの怪談めいたネットの反応を臨床心理学および環境認知の視点から分析すると、人間の心理的錯覚のメカニズムが浮き彫りになります。
第一の要因は、かつて存在したロープウェイ施設の遺構や山頂付近の通信用大型鉄塔群が醸し出す独特の威圧感です。無人の機械室や薄暗い林道が、人間の脳に「通常とは異なる異界」としての認識を抱かせ、何気ない物音や木々の揺れを心霊現象と誤認するアポフェニア(無関係なデータに意味や規則性を見出す認知バイアス)を誘発しています。
第二の要因は、野生動物の存在です。大平山一帯にはイノシシやシカ、タヌキなどの夜行性動物が多数生息しています。カーブを曲がった瞬間にライトの光を反射して獣の目が妖しく光ったり、急ブレーキの直後に草むらへ消えていく黒い影を目撃したりした体験が、恐怖心によって「幽霊を見た」という記憶にすり替えられたケースがほとんどです。
大手旅行サイトやSNS上のリアルな口コミ評判を精査すると、現場を訪れた人々の本音は明確に二分されています。
「工場地帯の光と瀬戸内海のコントラストが素晴らしく、中国地方でも屈指のパノラマ夜景」「ツツジの季節はもちろん、空気の澄んだ秋から初冬の夕景は息を呑むほど美しい」という絶賛の声が8割以上を占める一方で、「街灯がなくて夜の運転は生きた心地がしなかった」「道が細すぎて対向車が来たら詰む」といったドライビングリスクに対する悲鳴が確実に存在します。つまり、ネットで囁かれる「怖さ」の正体は幽霊ではなく、漆黒の闇に包まれた難易度の高い山道走行そのものなのです。